
最近のスポーツ番組を見ると10代のオリンピック選手などが活躍しており、今の若者は確実に運動能力が上がっているように見えます。
しかし実際には運動を積極的にする子供と、運動嫌いの子供といった二極化に分かれているようです。しかも「運動をしない」子供の割合が増えており、このままだと将来生活習慣病のリスクや精神面の不安といったことも懸念されるようになりました。
今の子供は、走る・跳ぶ・投げる等、体を動かす動作が苦手な子が増えています。スポーツをすれば体力や運動能力がつくこともありますが、まずは子供に「体を動かすことは楽しい!」ということに気づかせることが必要です。
目次
1.子供の体力、運動能力の水準が落ちている
今の子供は身長や体重といった体格面で見ると、昔の子供に比べてとても大きくなっています。理由としては生活が豊かになり、食生活が多彩になって昔よりも栄養摂取量が増えたためと言われています。
しかし運動能力に関しては20年前に比べると非常に落ちています。例えば、13歳女子の1キロ長距離走を見ると、昭和60年の平均タイムに比べ、平成12年では25秒以上も遅くなっているのです。これは現在でも上がることがなく、平成になってからの子供の運動能力は緩やかに減少傾向にあります。
1-1.原因は大人が悪い!?
子供の運動能力が最高値だったのは昭和60年頃、そして平成の時代に入ってからは減少の一途をたどっています。理由をあげると
- ゲームを中心に、家で遊べる遊具が増えた
- 土地開発により公園が減り、外で遊べる場所がなくなった
- 習い事や塾など、子供が遊べる時間がない
- 子供に対する風当たりが強く、外で遊んでいると注意される
これらの理由はいずれも大人が原因を作ったと言えます。ゲームを開発したのも大人、住みやすいマンションを建てたのも大人、習い事を優先し外で遊んでいる子供にうるさいというのも大人です。
今の子供は運動能力や体力がない…そうした原因を作ったのは他でもない大人です。子供たちの体力が心配なら、大人が運動をサポートする必要があります。
1-2.このままだとマズイ!運動不足の悪影響
運動が苦手な子に対して、無理やり運動をさせるのは良くない。確かにそうした意見も正しい気がします。
しかし全く体を動かさない子供の将来はどうなるでしょうか。文科省が行った調査によると、運動不足の子供は大人になってから肥満や生活習慣病のリスクが高いことがわかりました。そして意欲の低下や気力の無さと言った精神面でも不安要素を抱えることが多いと分かっています。一部の識者からは若い世代のうつ病が増えた要因として、幼少期の運動不足を指摘している人もいます。
子供は本来体を動かすことが大好きです。運動が苦手な子には、その子が興味を持つような体の動かしかたを大人が指導する必要があります。
2.子供に楽しい運動を!アクティブチャイルドプログラム
子供の体力低下や運動不足は将来の医療費負担になることも分かっており、国としても問題を解決すべく動きだしました。
その一環として注目されているのが日本体育協会が展開している「アクティブチャイルドプログラム」です。これはただ「やらされている」運動ではなく、子供たちが「自ら率先して体を動かす」ことを目的とした画期的なプログラムです。
2-1.アクティブチャイルドプログラムの概要
「子どもたちが楽しみながら積極的にからだを動かせる」それがアクティブ・チャイルド・プログラム通称(ACP)です。
これは主に4つのテーマに基づいています。
- 子供の体力や現状の運動能力を知り、体を動かすことの重要性を分かってもらう
- 多様な動きを身につける
- 運動遊びや伝承遊びを取り入れる
- 体を動かすことを習慣化させる
この4つのポイントを重視し、日本体育協会が学校やスポーツクラブといった実際の指導現場への普及を図っています。
2-2.運動が苦手な子でも取り組める
アクティブチャイルドプログラム(以下ACP)の良い点は、運動が得意な子もそうでない子もみんなで楽しむことができることです。
例えば「ドッチボール」はボール遊びが得意な子は楽しいですが、苦手な子はすぐに当てられてしまいつまらないと感じるでしょう。しかしACPのボール遊びの1例を見ると、1つのボールを使うのではなく、1人1人がボールを持って投げ合うといった内容になっています。やわらかいゴムボールを四方八方に投げ合い、2個以上拾うことが目的といった遊びです。これなら運動の得意不得意はあまり関係がなく、ボールを投げ合うだけでも楽しい運動遊びです。
2-3.とにかく「楽しむ」ことが大切
ACPの運動の特徴は、「遊びプログラム」といって運動遊びと伝承遊びを中心に展開しているところです。
例えば立ち幅跳びや50メートル走といった一般的な体育では、苦手な子は「やってもうまくできない」と感じ運動に抵抗を覚えてしまうこともあるでしょう。
しかしACPの遊びプログラムなら、楽しみながら体を動かすことができます。例えばプログラムの1つである「落とさず捕まえろ」は、簡単に言うと鬼ごっこです。しかしお腹にティッシュを一枚置いて、ティッシュを落とさないように走りながら鬼ごっこを行います。鬼に追われるスリルと、自分のティッシュが落ちないように走る工夫が何とも楽しく、非常に盛り上がる運動遊びです。楽しいと感じる運動はやらされている感覚がなく、自分から率先して体を動かすことにもつながります。
3.家庭でもできる!アクティブチャイルドプログラム
アクティブチャイルドプログラムの運動は、何も学校やスポーツクラブといった集団だけで行うものではありません。家族でも狭い部屋の中でもできるプログラムがあります。これを機に家庭でも毎日親子で体を動かす習慣をつけましょう。
3-1.新聞紙を使い運動しよう
例えば小さなお子さんならば、新聞紙1枚あれば家でも思い切り遊ぶことができます。親が新聞紙を両手に持ち、それをタッチできるか微妙な高さまで持ち上げ、子供はそれにタッチできるよう何度もジャンプします。こうして飛び続けるだけでも子供にとっては体を使った跳躍運動になます。
そのほかにも広げた新聞紙をパンチで破く、丸めた新聞紙をお互い当てっこする、小さく折り畳んだ新聞紙の上に片足で何秒立てるか競うなど、遊ぶ方法はたくさんあります。親子で遊んであげる時間を持つと子供は喜びますし、ほんの数分体を動かすだけでも心身のリフレッシュ効果があるでしょう。
3-2.親ができるアクティブチャイルドプログラムとは
ACPは学校やスポーツクラブなどで徐々に広がりを見せています。しかしすべての子供の生活に浸透しているとはまだ言えません。
あなたは普段お子さんを外に連れ出していますか?「外で遊んできなさい」と言っても、中には携帯ゲームを持って公園で動かない子もいます。ここはなるべく親が一緒に外へ出る機会を増やし、簡単なキャッチボールでも良いので一緒に遊んであげましょう。親が楽しそうに運動をしていると子供もうれしくなり、それは家庭でできる何よりのアクティブチャイルドプログラムとなります。
まとめ
最近のテレビでは、いかに運動が苦手かというテーマで笑いを取っている番組もあります。スキップができなかったり全く泳げなかったり。中にはボールを蹴ることができなかったり、まともに走れなかったりする人もいます。
少々大げさに演出をしているのかもしれませんが、今の子供たちを見ていると同じような子もいます。本来スキップやボールを蹴るという動きは学校で教わるものでなく、近所での遊びや子供同士の遊びで自然と身につけるものです。しかし今の子供たちは気軽に遊ぶ環境が奪われ、運動本来の動きを覚える機会もないのかもしれません。
アクティブチャイルドプログラムは学校や各自治体で行われていることが多いのですが、まずは家庭でできることとして積極的に外に遊びに行きましょう。一緒にボール遊びをする、かけっこをする、そして目的地に歩くだけでも運動になります。親子で楽しく体を動かすことはアクティブチャイルドプログラムの第一歩となります。