
ペアレントトレーニングというのを知っていますか?これは1960年代に知的障害や発達障害のある子供に向けた育児方法としてアメリカで生まれました。
しかし現在は障害に関係なく、すべての子育て世代に向けた育児方法として注目されています。言うことを聞かない、そんな子供に思わず手を挙げてしまう…。昔も今も体罰に関する悲しいニュースは後を絶ちません。体罰は体だけではなく、子供の心に深い傷を残し大人になってからも影響を受けることが知られています。ペアレントトレーニングは子供の行動改善に期待できるだけでなく、親のストレスも減らすことができる教育方法です。家庭でできるペアレントトレーニングもあるので、ぜひ記事を参考にしてみてください。
目次
1.そもそもペアレントトレーニングとは
ペアレントトレーニングは、1960年代にアメリカで発祥された教育方法です。当時はまだ発達障害や知的障害児への理解が足りず、ただ怒鳴ったり叩いたりすることで親の言う事を無理やり強制させていたのが現状でした。
その教育方法を見直そうと、生まれたのがペアレントトレーニングです。子供が問題行動を起こしたら叱り飛ばすのではなく、良い点を見つけてほめながら子供の行動を改善させていく教育方法です。日本医は1980年代に持ち込まれ、子供の性格や行動などに合わせて変えていく事により、障害の有無に関係なく役立っています。
1-1.行政機関、医療機関で行っている
ペアレントトレーニングはそもそも障害児に向けたプログラムなので、本格的なトレーニングを受けたいのであれば行政機関などへ出向く必要があります。
基本的に保険適用外となり、一度のトレーニングで2千円~6千円程度掛かることが多いでしょう。トレーニング内容は一度につき1~2時間、その親子だけでなく数組の親子と同時に行われることが多いです。また5~10回にわたりトレーニングを積むことで親子関係の改善に期待ができます。
発達に障害のあるお子さんに悩んでいる保護者の場合、行政機関で無料でグループワークを組んで参加できることもあります。また子供に対する虐待に悩む保護者へも、行政機関がペアレントトレーニングをすすめることがあります。
1-2.身近にペアレントトレーニングを知ろう
本格的なトレーニングを受ける場合は行政機関などに相談が必要、そう聞くと「うちの場合はそこまでじゃないわ」と思う親御さんも多いでしょう。
しかし子供が宿題をしない、言う事を聞かない、そんなことで毎日イライラしていませんか?他人の子と比較して子供の将来を不安に思った経験はありませんか?一度でもそうした経験があるのなら、ぜひペアレントトレーニングを家庭に取り入れてみましょう。またペアレントトレーニングに関する情報は、自治体や子育て支援の場でもよく取り入れられ、多数の書籍もあります。子供に障害の有無があるかどうかは関係なく、ぜひ家庭でも身近にペアレントトレーニングを取り入れていきましょう。
2.ペアレントトレーニングの具体例
ではペアレントトレーニングとは具体的にどのようなものか見てみましょう。細かく分けると「鳥取形式」「肥前方式」などと、ペアレントトレーニングにはやや内容が分かれているものもあります。しかしどのトレーニングも以下の3つの対処方法はほぼ同じです。
- 子供が正しい行動を取った→ほめる
- 好ましくない行動を取った→指示の工夫を考える
- 許しがたい行動を取った→ルールを一緒に考える
注目すべきは「叱らない」という点です。もちろん行動によってはある程度の罰則を与える必要もありますが、基本的には「ほめる」ことで好ましい行動を増やし、子供の行動の変化を促していきます。
2-1.自分でできるペアレントトレーニングとは
では家庭でもできるペアレントトレーニングをざっと見て行きましょう。
- こどもの行動で「もっとやってほしいな」ということを書きだします。(例 宿題、後片付けなど)
- やってほしい行動が少しでも見えたらほめます。このとき完璧は求めないこと。例えば宿題ならランドセルから出した時点でほめる。
- 子供がほめられたという満足感を得ているなら、トレーニングは完成です。(照れくさそう、嬉しそうな表情をしている)
これだけを見るととても簡単なトレーニングだということが分かります。親はまず子供に求めることを紙に書きだすことからスタートです。書いているうちに「こんなにある、これは子供に求めすぎだ」「これは別にやらなくても良いことなのでは?」と自分の心と向き合うこともできます。
2-2.ペアレントトレーニングの注意点
家庭でも簡単に実践できるペアレントトレーニングですが、いくつかの注意点はあります。
まず子供にしてほしい行動に対し「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」という言葉はNGです。つまり行動に対して完璧を求めてはいけないのです。多くの親の場合「宿題をきちんとする」と求めがちですが、紙には「宿題をする」と書きましょう。その結果汚い字や間違っていても宿題をすればOKになり、親は内容がどうであれ子供をほめる必要がでてきます。
ほめることですが、これは子供の行動に対して完璧を求めてはいけません。完璧にこなすのを見届けるのではなく、してほしい行動を始めた時点でほめることが大切です。
また「ほめる」のは言葉掛けをするのはもちろん、うなずいたり頭をなでたり、笑いかけてあげるのもほめることになります。その子が喜ぶ関わり方を探ってあげることが大切です。
3.ペアレントトレーニングで得るものとは
実際のペアレントトレーニングではそれぞれの親子に合ったプログラムが用意され、行う内容ももっと充実したものになっています。各親子のグループが参加することにより他の家庭の関り方が参考になったり、ほめ方への工夫を発見できたりもするようです。
ただ先ほどの子供に対して希望する行動を紙に書き、少しでも実施できたらほめるという簡単なトレーニングだけでも、親子関係をストレスの少ないものに変化できます。では本格的な内容でも家庭でできるペアレントトレーニングでも、それにより得られるメリットについて見てみましょう。
3-1.子供の行動の変化に期待ができる
「ほめて育てる」という子育法ては、ここ数十年で盛んに言われるようになりました。ペアレントトレーニングはまさにほめて育てるという教育方法であり、それにより子供に以下のようなうれしい報告があります。
- 朝の準備や宿題などがスムーズに進むようになった
- 子どもからも「ありがとう」と言われるようになった
- お手伝いをすすんで行ってくれる
- 子供が何かしら自信を持って対応するようになった
この他にも「かんしゃくが減った」「落ち着いてきた」など、親から見て困ることの多い問題行動は減るようになります。ほめられるということは、親が思っている以上に子供の行動を良くする意味があるようです。
3-2.親にもある!ペアレントトレーニングの嬉しい成果
一方ペアレントトレーニングは子供の問題行動を改善するだけでなく、親にとっても嬉しい成果があります。
- 子供に対してイライラが減った
- 無駄に叱ることが減った
- 子供に対し、自然とほめることができるようになった
- 子育てに対して自信を持てるようになった
こうしたすべての効果を得るには、家庭でできる簡単なペアレントトレーニングだけでは難しいかもしれません。また子育てに自信がない、手をあげてしまうといった親自身が悩んでいる人の方が成果を上げることができるようです。
しかしいきなり専門機関へ行かなくても、まずは子供を叱らずほめることのトレーニングから始めてみましょう。親も子供を叱ることがきっかけでイライラすることが多いので、まずはほめる言葉を口にし、その場の空気を和らげることが大切です。
まとめ
ペアレントトレーニングは家庭でも簡単に取り入れることはできますが、基本的には複数の親子が集まり、グループとして学ぶことが多いです。同じように子育てに悩んでいる家族と出会い、話し合えたり解決策を考えたりすることは大きな収穫になるでしょう。
まだまだペアレントトレーニングを取り入れている自治体は少ないのが現状ですが、ペアレントトレーニングを中心とした子育てアドバイスや講演会を行う地域は徐々に増えています。子育てにイライラする、いつも怒っているということがあるならば、一度ペアレントトレーニングに関する情報を集めてみてはいかがでしょうか。ペアレントトレーニングに出会ったことがきっかけで、それぞれの家庭にあった楽しい子育て方法が見つかるかもしれません。